渋沢栄一という人をご存知ですか?
教科書で名前を見たかも?なんて人が多いのではないかと思います。
私も渋沢栄一といえば「日本資本主義の父」「銀行の創始者」という曖昧な情報を覚えていただけで、深く調べたこともないまま成人していました。
しかし去年、身近な起業家に最も好きな歴史上の人物を訪ねたときに「渋沢栄一」という回答だったので「おや」と思ったのを覚えています。
でも何かと忙しい毎日の中、それも徐々に忘れて過ごしていました。
突然目に入ってきた「本質は古びない」という帯
先週、私は少し疲れていました。
旅行の前後に仕事をびっちり詰め込んでしまったこと、プライベートで友人を集める会の幹事を引き受けていたことなど、予定が目白押しで気分的に落ち着きません。
(まあ自分が好きで組んだ予定なので仕方ないのですが)
くわえて、夫が激務のなかにあり、これまた体力的にも精神的にも少し息をつかないと、という状況だったのです。
そんなとき、本屋で平積みされたこの書籍に出会いました。
帯に記されていたのは「本質は古びない!ドラッカーに影響を与えた偉才のことば」です。
先人の知恵を借りて、ゆっくり毎日を振り返ってみたい。
ふとそう思って手に取りました。
本書は、渋沢栄一の玄孫にあたる渋沢健氏が書き記した物です。
渋沢栄一は非常にユニークな経歴の持ち主で、かつビジネスマンとしては300にも及ぶ事業の立ち上げに関わるという、まさに近代日本の礎を築くのに欠かせない人物でした。
その長い人生の中で仕事や人との関わり、国や教育のあるべき姿など多くを考え、記してきていたのです。
厚さ1cmほどの薄い本。100の訓言というからには100の言葉を取り上げているのだと思えば、あっという間に読了できます。
迷わず購入しました。
「渋沢栄一100の訓言」内容について
本書の内容は以下のとおりです。
- はじめに なぜ、いま、渋沢栄一なのか
第1章 心にも富を貯えるための教え
第2章 行いを研ぎすますための教え
第3章 規律を学ぶための教え
第4章 運のつかみ方を知るための教え
第5章 教育の理想を説いた教え
第6章 家族と幸せになるための教え
第7章 人と人との関係を楽しくする教え
第8章 会社の本質を見抜く教え
第9章 社会を元気にする教え
第10章 世界とともに生きるための教え
第11章 お金儲けの哲学が光る教え
各章ごとに幾つかの「金言」が掲げられていて、見開きの右ページに要約・原文・現代語訳が、左ページには著者の解釈に基づく例示や講話が記されています。
おそらく、幅広く多くの人に読んでほしいという著者と編集者の心遣いなのだと思いますが、左ページの講話については賛否両論あるかと思います。
原文は原文のまま読んでじっくり自分で解釈したい、と思う方がいるような気がするからです。
私もどちらかというと、自分なりにその言葉を見たときのインパクトを大事に、気になった言葉を咀嚼してじっくり考えたい方です。
とはいえ、著者の講話部分も非常にわかりやすい話が多いです。ご自身もビジネスのご経験を元に書かれているというのが伝わってきますので、解釈の手引き、あるいは一つの解釈の仕方として割り切れば楽しく読めると思います。
心にささる名言
正直読み手によって当たり外れはあるでしょう。
そのときのコンディションや置かれている状況によっても気になる言葉が変わりそうです。
そんななか、いまの私の好きな言葉はこれです。
「人は死ぬまで同じ事をするものではない。理想に由って生きるのが、趣味ある人の行動である。」
(渋沢栄一訓言集 座右名と家訓)
死ぬまで同じ日々の繰り返しを過ごしていればいいわけではない。
物事の味わいがわかる人は自らの理想に従って生きていくのだ、という意味でしょう。
最近新しい道へと進んだ友人がまさに自分の考えや理想に自信を持って突き進むタイプだったので、その純粋さや力強さを失わずに、能力をいかんなく発揮してほしいと、この言葉を贈りました。
私もいまから10年後、20年後”趣味ある人”らしい風格と自信を備えて、それでいてなお、新しいことへの興味や感激を失わない柔軟な心を持てるよう歳を重ねていきたいと心から思います。
本当に通勤や何かの隙間の時間であっという間に読める一冊です。ぜひお手にとってみてはいかがでしょうか?